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関西プラッと便 北野天満宮周辺を歩く

関西プラッと便

2014年2月14日掲載

  冬の寒さも峠を越え、梅のシーズンも間近です。この季節になると、「東風(こち)吹かば匂ひおこせよ梅の花 あるじなしとて春を忘るな」と、詠んだ菅原道真公(菅公)の歌を思い浮かべます。早春の便りを思わせる心地よい風が吹いた日、道真公を祀る北野天満宮(京都市上京区)を散策しました。

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■梅を愛した菅原道真公
  京都市営バスの北野天満宮前で下車すると、大きな鳥居が目に入ります。観光マップを持った修学旅行生や女性の団体、カップルらでにぎわっていました。鳥居をくぐり抜けて、石畳の参道を進むと、西側に「梅苑」が見えます。ようやく、つぼみがほころび始めたばかりですが、ほんのりと赤みを帯び、一足早い春を感じさせてくれました。
  北野天満宮は道真公(845~903年)をお祀りした全国の天満宮の総本社です。幼少の頃から学業に優れた道真公は、和歌を詠み、漢詩を作った学者出身の政治家です。右大臣(現代に例えると、副総理クラス)にまで上りつめましたが、藤原氏にねたまれ、昌泰4年(901年)に九州の大宰府に左遷され、ここで生涯を閉じます。
  「東風吹かば……」の歌は、左遷されるとき、日ごろ愛していた自宅の梅の木に別れを告げて詠んだといわれます。道真公はほかにも美しや紅の色なる梅の花 あこが顔にもつけたくぞあるという歌を残すなど、梅には、ひとかどならぬ愛情を抱いていたのでしょう。

■今年は2月上旬から梅苑を公開
  そんな、道真公にちなんで、北野天満宮には約50種、約1500本の梅が、梅苑を中心に、境内のいたるところに植えられています。加藤晃靖・権禰宜(ごんねぎ)は「早咲き、中咲き、遅咲きの3タイプの梅があります。暖冬の年は12月中に咲き始めることもありますが、今年は寒さが厳しく、1月下旬になり、ようやく開花致しました」と教えてくれました。
  梅苑の公開は開花時期に合わせており、今年は2月8日(土)に開苑しました。遅咲きの種もあるので、3月下旬ごろまで楽しめそうです。
  また、道真公の命日に当たる2月25日には毎年、「梅花祭」が盛大に営まれ、上七軒の芸妓(げいこ)、舞妓(まいこ)さんがもてなしてくれる「梅花祭野点大茶湯」が催されます。
  また、北野天満宮は梅とともに、モミジの名所としても知られています。晩秋には、境内のもみじ苑は紅錦(くれないにしき)に彩られます。

■学問の神様として篤い信仰
  道真公の誠実な人柄と晩年の不遇は、様々な伝説を生み、後に「天神さま」とあがめられ、信仰されるようになりました。本殿前では心に祈りを捧げる中学生のグループがいました。尋ねると、大宰府のあった福岡県から来たと言い、「希望の高校に入れますようにとお願いしました」と笑顔を浮かべていました。きっと願いが叶うことでしょう。
  沖縄県や愛知県から来たグループにも出会いました。全国各地から参拝者が訪れ、まさに、学業成就の〈聖地〉といった趣です。
  願い事を絵馬に書くテントが設置されていました。そこで、参拝者はそれぞれの思いを絵馬に書き込み、「絵馬掛所」に奉納されます。絵馬に書かれた願い事を読むと有名大学への合格、就職活動の成就、スポーツでの活躍など様々な思いが記されていました。

■牛の像を撫でて健康を願う参拝者
  道真公は丑(うし)年生まれで、牛と結びついた逸話も多く伝承されています。そのため、境内には大きな像だけでも約20体の牛の像が祀られています。小さな像を含めると、30体以上ありそうです。「何体あるのかな?」と数えながら、歩くのも楽しいです。
  牛の像は信仰の対象にもなっています。牛の像の頭を撫でれば、頭が良くなる。自分の体で弱っている箇所を撫でた後、牛の像の同じ箇所を撫でれば治るなどといわれ、病気平癒や健康を願う人の列ができていました。頭を撫でる高校生らの姿に、ほっとした安らぎを覚えました。
  北野天満宮は、厄除けの御利益でも知られます。道真公の命日の日に、白梅42本、紅梅33本の小枝を挿し、玄米を入れた筒状の紙立(こうだて)を本殿に捧げて祈ります。加藤権禰宜は「白梅は男性の大厄に当たる42歳、紅梅は女性の33歳にちなんで、厄を払います。天神さんに来て頂いて、ともすれば忘れがちな神様に感謝の気持ちを養ってくれれば」と話していました。

■磁石が引っ付く平野神社の霊石
  北野天満宮の北門を通り抜けて、2、3分歩くと、道を隔てて、平野神社に着きます。平安京遷都(794年)とともに、奈良の地から移ってきた由緒ある神社です。
  境内には「すえひろがね」という〈霊石〉がありました。すえひろがねは、餅鉄(磁鉄鉱)とも呼ばれ、鉄分を多く含んでいるため、磁石を近づけると引っ付きます。驚きのパワーから、「鉄尊様」と、あがめられています。その後方にそびえるクスノキは樹齢400年以上、周径6・7メートルの巨木です。この巨木を右回りに回りながら、願い事をすれば、良いことがあるそうです。
  まだ、季節は早いですが、京都の桜の名所としても有名です。「桜苑」には約50種、約400本の桜が植わっています。珍種の桜が多く、花柄(かへい)の先に2つの実をつける「妹背桜」は、平野神社が原木地です。2つの実が仲良く着くことから、妹背桜をモチーフにしたお守りはカップルに人気です。
  境内を歩くと「ひょっこりひょうたん島ワンコイン支援コンサート」のポスターが目に留まりました。小野兼司・権禰宜にうかがうと、「ひょっこりひょうたん島のモデルになった岩手県大槌町の蓬莱島にある弁天様の祠(ほこら)が、東日本大震災で流され、調査に行きました。それがきっかけで、復興の願いを込めて支援コンサートを始めました」と説明してくれました。毎月最終の日曜日午前11時から同神社で開催しています。入場料は、かつて子どもだった人500円、中高生100円、小学生10円。これを支援金として被災地に送っています。地道な活動にさわやかな感動を受けました。

〈上七軒歌舞練場〉
  北野天満宮駐車場から東へ徒歩約5分。上七軒は京都5花街で最も長い歴史を誇ります。歌舞練場の敷地内にある喫茶「さろん上七軒」は、平日でも立ち寄れます。運が良ければ、歌舞練場に来る芸妓・舞妓さんに出会うことがあります。
春の風物詩「北野をどり」は3月25日~4月7日に同歌舞練場で開催されます。
TEL:075・461・0148

〈長五郎餅〉
  豊臣秀吉が天正15年(1587年)に北野天満宮で「北野大茶之湯」を催した際、河内屋長五郎が茶菓として献上したのが「長五郎餅」といわれます。こしあんを羽二重で包んだ絶妙の味です。この由来から、北野天神縁日の毎月25日と、梅シーズンの3月までの土・日・祝日には、境内東門の長五郎本舗の出店で茶菓を味わえます。本舗は北野天満宮から徒歩10分の上京区一条七本松西入。
TEL:075・461・1074

〈わら天神宮〉
  平野神社から徒歩北へ約10分。安産、子授け、子どもの成長を願う人でにぎわっています。北野天満宮~平野神社~わら神宮を巡るのも散策コースです。

〈京都府立堂本印象美術館〉
  北野天満宮から歩いて約15分。神社巡りの後は美術館に足を運ぶのも一興です。3月30日まで企画展「美の跫(あし)音」展と「浅井忠の眼―パリの街角を飾ったポスター―」展を開催。美の跫音展はヨーロッパを訪れ現地の風景を題材にした印象の素描、ペン画、油彩画などを中心に展示しています。月曜日休館。
TEL:075・463・0007

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