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関西プラッと便 奈良・学園前の美術館を巡る

関西プラッと便

2014年8月8日掲載

  奈良市の近鉄学園前駅周辺の閑静な住宅街に、近鉄グループが誇る二つの美術館があります。一つは、中国、朝鮮、日本の書画をはじめ、陶磁器など一級の美術品ばかりを集めた「大和文華館」。もう一つは、日本画家の上村松園(しょうえん)、松篁(しょうこう)、淳之(あつし)の親子三代の作品を集めた「松伯美術館」です。両美術館を巡って、古代から現代に至るまでの文化を堪能しましょう。

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■国宝、重要文化財など優れた美術品がそろう大和文華館
  学園前駅から南へ歩いて約10分のところに、大和文華館があります。受付で入場料を払い、広い庭園の緩やかな坂道を上った小高い丘のうえに建物がありました。
  同館は、太平洋戦争後の復興期に美術の力で国民を励まし、日本の文化を世界に発信することを目的に、近畿日本鉄道創業50年に当たる1960年に創設されました。所蔵品は国宝4件、重要文化財31件など計約2000件に及んでいます。
  「なかでも、国宝『婦女遊楽図屏風』(江戸時代)は、等身大の遊女が描かれ、着物や小物から当時のファッションや流行が見て取れます。また、野々村仁清の『色絵おしどり香合』はとてもかわいらしくて、人気がありますね」と学芸員の古川攝一(しょういち)さんは話してくれました。このほかにも、平安時代後期の絵巻物で国宝「寝覚物語絵巻(ねざめものがたりえまき)」や室町時代の画家、雪村周継筆の重要文化財「呂洞賓図(りょどうひんず)」など素晴らしい所蔵品がそろい、同館企画の展覧会で順次展示されています。

■ゆっくり鑑賞できる展示室
  展覧会は年に8回開催。今年は8月17日まで、唐草文様などを紹介する特別企画展「連続・反復の美 文様に込められた想い」を開いた後、8月22日から、日本最後の文人画家と言われる富岡鉄斎の作品を中心とする特別企画展「富岡鉄斎と近代日本の中国趣味」(10月5日まで)を催します。続いて、江戸琳派の祖とされる酒井抱一の作品の魅力にせまる特別展「酒井抱一 江戸情緒の精華」(10月11日~11月16日)が開かれる予定です。
  展示場は広くありませんが、中に坪庭風の中庭があり、竹が植えられています。なぜ?と驚いていると、「ゆったりとした気持ちになってもらい、柔らかな光の中で鑑賞してもらうための工夫です」と古川さんが教えてくれました。美術鑑賞に疲れると、館の外の庭を散歩し、戻って来て、また展示品を見るなど一日中、楽しむことができるので、年間4万5000人前後が訪れています。

■しゃれたデザインのミュージアムグッズも人気
  じっくりと展覧会を堪能した後は、ミュージアムショップへ。同館のグッズは、現代的なデザインで人気があります。たとえば、同館所蔵の黒織部沓茶碗に描かれた格子文や、展示場壁面の木組みの文様をデザインしたTシャツなどは人気商品で、これらを目当てに同館を訪れる人も多いそうです。
  このほかにも、絵はがき、一筆箋、ネクタイ、ボールペン、トートバッグなどが販売されており、いずれもおしゃれな意匠です。「あっ!」。以前からほしかった佐竹本三十六歌仙の「小大君像」のクリアファイルを見つけました。次から次に素敵なグッズが見つかります。好きな美術作品を身近に置いて楽しめるのがミュージアムグッズのいいところです。

■日本画壇の巨匠、上村松園、松篁、淳之の親子三代の作品を所蔵する松伯美術館
  続いて、松伯美術館に向かいます。いったん、学園前駅に戻り、5、6番乗り場からバスに乗ります。バスは数分おきに出発しているので、長く待つことはありません。
  大渕橋バス停で下車し、橋を渡ったところに、美術館がありました。美術館の敷地の中には故佐伯勇・近鉄名誉会長の旧邸があります。同館は1994年にオープンし、今年が20周年です。
  まず、美術館に入る前に、上村家三代について知っておきましょう。上村松園(1875~1949)は、明治時代に京都に生まれ、若くして才能を開花させました。気品のある美人画を描き、理想とする精神を表現した独自の女性人物画の世界を完成させ、女性で初めて文化勲章を受章しました。2代目の松篁(1902~2001)は、幼いころから、生き物に親しみ、慈愛に満ちた清澄で格調高い空間表現の花鳥画や人物画を生み出し、母の松園と同じく文化勲章を受章しています。
  3代目は同美術館館長の淳之さん(1933~)です。東洋の自然観に基づいて、絵画の精神的重要性を説き、近代的な花鳥画を描き、文化功労者の顕彰を受けました。
  館では松園14点、松篁102点、淳之館長99点の本画をはじめ、上村三代の素描、草稿、写生など計605点を所蔵。美術資料の収集・保管と展示を通じて紹介しています。同館によると、上村三代の作品をこれほど多く所蔵しているのは、国内ではここだけです。なので、展覧会ごとに三代の作品を入れ替えて展示しているそうです。
  また、同館では、平常展、特別展、企画展に加え、若手作家の育成を目的に、公募展も開催し、年間約3万人が訪れています。まさに、関西の日本画の拠点の一つといえるでしょう。

■横山大観らの作品を紹介する企画展も9月28日まで開催
  8月12日からは、近代日本画史に足跡を残した横山大観、川合玉堂、橋本関雪、小野竹喬などの作品を上村三代の作品とともに紹介する企画展「楽しむ 味わう 近代日本画の抒情~ウッドワン美術館コレクションを中心に~」(9月28日まで)を開催。続いて、上村三代の素描と下絵、本画から作品の創造の秘密に迫る「受け継がれる眼 見つめる!~松園、松篁、淳之にみる素描の力~」(10月11日~11月30日)が開かれる予定です。
  展示室を巡った後は、やはりミュージアムショップに寄ります。松園の人気作品で、鼓を打つ女性を描いた「鼓の音」、「楊貴妃」などをデザインしたグッズがたくさんそろっています。ここでも、三代それぞれのクリアファイルや一筆箋を買ってしまいました。
  大和文華館、松伯美術館で各1時間半ずつ。質の高い美術品を見て、まさに、至福の時を過ごしました。土産に買ったミュージアムグッズで両手がふさがっています。家に帰ってグッズを広げ、ゆっくりと眺めるのが楽しみです。

〈大和文華館〉奈良市学園南1‐11‐6
  開館時間10:00~17:00 入館料は平常展・特別企画展が一般620円、高校・大学生410円、小学・中学生無料。特別展は一般930円、高校・大学生720円、小学・中学生無料。月曜日休館(祝日は開館し、次の平日休館)。
TEL0742‐45‐0544 ホームページはhttp://www.kintetsu.jp/yamato/


〈松伯美術館〉奈良市登美ヶ丘2‐1‐4
  開館時間10:00~17:00 入館料は特別展以外は大人(高校・大学生を含む)820円、小学・中学生410円。特別展は大人(高校・大学生を含む)1030円、小学・中学生510円。月曜日休館(祝日は開館し、次の平日休館)。また、年末年始、展示替え期間などに臨時休館。
TEL0742‐41‐6666 ホームページはhttp://www.kintetsu.jp/shohaku/


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