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関西プラッと便 世界遺産の吉野山を歩く

関西プラッと便

2014年7月25日掲載

  7月に世界遺産登録10周年を迎えた「紀伊山地の霊場と参詣道(さんけいみち)」は、奈良・和歌山・三重の3県にまたがる3つの霊場(吉野・大峯、熊野三山、高野山)と、それにつながる参詣道です。3霊場の一つ、吉野山を歩きました。桜のシーズンには大勢の人出でにぎわう吉野山も、夏場はひっそりと静まり、山岳信仰と南朝哀史、義経悲話に彩られた厳かな雰囲気をたたえ、訪れる人を出迎えてくれます。

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■「機械遺産」に認定された現存最古のロープウェーで吉野山へ
  吉野山は修験道の開祖、役行者が開いた「行場」として、今も信仰が息づいています。急峻(きゅうしゅん)な坂が続く険しい山道の気軽な歩き方を吉野町役場文化観光交流課・表谷温子課長補佐に教えてもらい、世界遺産巡りにチャレンジしました。
  ロープウェーとバスを使って、いったん山上付近の奥千本まで上り、そこから、中千本へ下るルートです。山の上から近畿自然歩道に沿って下りながら、金峯(きんぷ)神社、吉野水分(みくまり)神社、吉水神社、金峯山寺(きんぷせんじ)蔵王堂、仁王門、銅(かね)の鳥居と世界遺産登録の名所を訪ねました。約6キロの道のりですが、高低差は約450メートルもあり、爽快感に満たされます。
  表谷さんのアドバイスに従って、近鉄吉野線の終着駅・吉野駅で下車。すぐそばにある吉野大峯ケーブル・千本口駅でロープウェーに乗り込みました。ロープウェーは1929年(昭和4年)に開通した現存する日本最古のもので、2年前に日本機械学会の「機械遺産」認定を受けました。機械遺産に乗るだけでも貴重な体験です。約3分で、103メートルの高低差を一気に上り、吉野山駅に到着。途中、ゴンドラの車窓から眺める山々の深い緑が目に焼き付きました。

■金峯神社は山伏の行場。近くには義経隠れ塔、西行庵も(奥千本)
  吉野山駅に着くと、吉野大峯ケーブル自動車の小さなバスが出迎えてくれました。シーズンオフで乗客は3人。まるで、タクシーに乗っているような気分です。曲がりくねった山道を約20分かけて進み、標高約730メートルの金峯神社前の奥千本口停留所に到着。さあ、いよいよ世界遺産巡りのスタートです。
  修行門と呼ばれる白木の鳥居をくぐり、急勾配の参道を上って神社拝殿へ。金峯神社も行場の一つで、山伏姿の行者に出会うこともあります。境内の脇には、源義経が頼朝方の追っ手から逃れるために、弁慶らと身を潜めたと伝えられる「義経隠れ塔」がひっそりとたたずんでいます。行者たちはこの真っ暗な塔内に籠もり、俗気を抜くといいます。小さな塔ですが、謂(いわ)れを知ると、歴史の1コマが鮮やかに浮かんできます。
  もう少し南へ分け入ると、源平の時代に生きた歌人、西行が3年間過ごした苔(こけ)むした杉皮葺きの小さな庵(いおり)があります。今も「苔清水」と呼ばれる水がこんこんと湧(わ)き出ています。「とくとくと落つる岩間の苔清水 汲みほすほどもなき住居かな」。西行の歌の情景がそのまま残っています。木の樋(とい)を伝って流れ出す清水に思わず、手を伸ばして歌人の気分に浸りました。

■子授け信仰の「子守宮」・吉野水分神社(上千本)
  金峯神社まで引き返し、高城山展望台に向かいます。南北朝時代に後醍醐天皇の皇子、護良親王(もりながしんのう、もりよししんのう)が、この地で挙兵した際、最後方の「根城」にしたと伝えられ、高台は山々が展望できる休憩所として整備されています。ここで、一休みしていると、男性の2人連れに出会いました。千本口から上ってきたそうです。「奥千本までもう一息ですよ」と声をかけると、ガッツポーズで、上って行きました。
  次は吉野水分神社へ。「みくまり」が「みこもり」となまり、子授けの神社としても信仰を集め、子守宮とも呼ばれています。豊臣秀吉も訪れ、秀頼を授かったといわれ、慶長10年(1605年)、秀頼によって建てられたのが、現在の社殿です。楼門をくぐって境内に入ると、正面ではなく右手に本殿が建っています。山上の狭い地形に制約されたためでしょうか。平野部の神社とは異なる趣に吉野山の神秘を感じました。
  しばらく下ると「佐藤忠信花矢倉」に着きます。歌舞伎や人形浄瑠璃の『義経千本桜』に登場する義経四天王の一人、佐藤忠信がここで一人踏み止まり、頼朝方の僧兵、横川覚範を討ち取った場所です。少し先には「覚範首塚」があり、義経ファンにはたまらないスポットです。

■心に潜む「魔」をたたき割る迫力満点の金剛蔵王大権現(中千本)
  この辺りから下の中千本付近を眺めると、金峯山寺蔵王堂の屋根が見えます。「ゴールは近い」と元気が湧いてきました。
  覚範首塚から曲がりくねった道を歩いて約40分。後醍醐天皇を祀る吉水神社に着きました。日本最古の書院があり、ここに義経の一行が潜んだり、後醍醐天皇の御座所(居室)になったりした歴史の舞台です。吉水神社には後醍醐天皇が計画した幻の貨幣「乾坤(けんこん)通宝」が眠っているという伝説もあり、作家の高橋克彦さんの推理小説『南朝迷路』にも描かれました。哀史に彩られた神社ですが、今はペットの祈祷でも人気があります。ワンちゃんと一緒にお参りができるので、愛犬家は是非、足を運びましょう。
  歩き疲れたので休憩を兼ねて、「中店・豆富茶屋 林」で腹ごしらえ。吉野・大峰山系の水を使った豆腐づくしは絶品でした。
  そして、吉野山のシンボルで、修験道の金峯山寺へ。本堂は蔵王堂と呼ばれ、東大寺大仏殿に次ぐ、巨大な木造建築物(高さ34メートル、奥行き、幅ともに36メートル)です。本尊は役行者が千日修行し、衆生を救う仏の出現を祈った際に、山の岩場を破って現れたという像高6~7メートルの3体の秘仏・金剛蔵王大権現(2014年は11月1日~30日に公開)。「魔」をたたき割る迫力満点の形相に圧倒されます。魔は自分の心に潜んでいるのではないかと、自身を見つめ直したいものです。
  山上から、順に下ったので仁王門、そして本来ならば、聖地への入り口に当たる銅の鳥居をくぐって、修行の山に別れを告げました。歩き疲れた体を癒やすため、吉野山駅前でアユの塩焼きとビールで舌鼓を打って、夏の思い出を刻みました。

〈中店・豆富茶屋 林〉
  吉野・大峰山系の水は豆腐に適し、吉野地方には豆腐の名店があります。13%以上の豆乳濃度と国産大豆、にがりにこだわり、職人の味を守っています。中店・豆富茶屋 林では、出来たての豆腐が味わえます。歩き疲れて休憩にも立ち寄れ、豆乳ソフトクリーム、豆腐ドーナツも美味です。


〈吉野もの作り体験〉
  吉野には柿の葉ずし、吉野葛など数多くの名産品があります。温泉と宿泊施設を備えた「太鼓判 花夢・花夢」では▽大和こんにゃく作り▽柿の葉ずし作り▽葛作り▽葛菓子作り▽木工芸などが体験できます。 事前の申し込み、問い合わせはFAX0746・32・1103。メールはtaikoban-kamkam@yahoo.co.jp


〈吉野町森林セラピーロード木漏れ日体験ツアー〉
  2012年に県内で初めて森林セラピー基地の認定を受けた吉野町は「神仙峡・龍門の里コース(約5.0キロ)」「吉野・宮滝万葉コース(約6.1キロ)」の森林セラピーロードを設けました。インストラクターの指導の下、ウォーキングや呼吸法、レクリエーションを行い、精神的なストレスの軽減などを目差します。問い合わせ・申し込みは吉野ビジターズビューロー TEL0746・34・2522


〈吉野大峯ケーブル自動車のバス〉
  吉野神宮~奥千本口の間を運行。1時間に1本で出発時刻の問い合わせは、同自動車(TEL0746・32・0200)へ。観桜期は運行路の一部が歩行者天国になるため、竹林院~奥千本口の間のみの運行となります。


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