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関西プラッと便 プラッと山辺の道(後編)

関西プラッと便

2014年4月25日掲載

  邪馬台国のロマンをいざなう纒向(まきむく)遺跡(奈良県桜井市)から、巻向川に沿って、再び、山辺の道へ向かいました。山裾をぬって、渾々(こんこん)と流れる水音が、静寂の里山に響き渡り、「巻向の山辺とよみて行く水の 水泡のごとし世の人われは」と詠んだ柿本人麻呂の歌の情景が浮かびます。なだらかな起伏が続く山道を登り、足腰に軽い疲労感を覚えながらも野鳥のさえずりに励まされて、御陵、銅鏡、神剣など、古代史の謎に彩られた天理市を目指しました。(後編)

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■野見宿禰と當麻蹶速が戦った相撲の聖地
  現在の行政区画では、山辺の道ルートの北側は天理市、南側は桜井市に分かれていますが、邪馬台国の時代や大和王権があった頃は、この辺りは一体となって政権の中枢を構成していたと推測されます。纒向遺跡の発掘成果にわく桜井市に対して、天理市も我が古里こそ、「卑弥呼の里」だと声をあげるのもうなずけます。
  桧原(ひばら)神社(桜井市)から山辺の道に沿って北へ約1キロ。天理市との境界沿いに、穴師坐兵主(あなしにいますひょうず)神社(桜井市穴師)があり、その参道に「相撲神社」が鎮座しています。『日本書紀』によれば、第十一代・垂仁天皇の御代に、力自慢の野見宿禰(のみのすくね)と當麻蹶速(たいまのけはや)が、この地で初めて天覧相撲を取ったと伝えています。以来、相撲の聖地とあがめられ、昭和の大横綱・大鵬関と柏戸関もここで、手数(でず)入り(土俵入り)を奉納しました。前編で紹介した大神神社が日本酒のルーツなら、ここ相撲神社は国技のルーツです。先人は、私たちに、素晴らしいものを残してくれました。
  さて、天覧相撲では、野見宿禰が圧勝します。その後、宿禰は天皇に仕え、埴輪作りの職に任じられ、「土師(はじ)氏」の祖になったと伝えられます。宿禰は出雲出身の人で、この伝承にも、出雲の影が見え隠れします。そんなことを考えながら、境内で一休み。ハイカーらが、ペットボトルのお茶を飲み干していました。疲れを癒やして、さあ、天理市の“王陵”に向かいましょう。

■大和王権のランドマーク王陵の里
  相撲神社から下ると、景行天皇陵(渋谷向山古墳)が見えてきます。全長約300メートル。箸墓古墳よりも巨大です。その北には全長約240メートルの崇神天皇陵(行燈山古墳)があり、2つの御陵が並んだ光景は“王陵の里”です。2基は箸墓古墳より、少し時代が下る4世紀以降の古墳とされています。巨大な2基の御陵は、大和が日本列島の他地域に比べて突出した勢力を誇ったことを示す歴史のランドマークといえそうですね。
  さらに、北約1キロには全長約230メートルを誇る衾田(ふすまだ)陵(西殿塚古墳)もあります。第二十六代・継体天皇の皇后、手白香皇女(たしらかのひめみこ、6世紀ごろ)の陵に指定されています。しかし、出土した土器や特殊器台(埴輪の祖型)から、考古学的には邪馬台国の時代に近い3世紀末ごろの古墳との見方が有力です。その規模や年代から卑弥呼を継いだ2代目女王・台与(壱与)(とよ、いよ)の墓という説も浮かんでいます。3基の巨大古墳と周辺の数十基の古墳を合わせて「大和(おおやまと)・柳本古墳群」と呼ぶこともあります。山辺の道の中でも最大の見どころです。

■黒塚古墳に眠っていた謎の三角縁神獣鏡
  巨大古墳に隠れ、あまり注目されなかったのが、崇神天皇陵から西へ約500メートルの黒塚古墳です。山辺の道から外れますが、天理市が「卑弥呼の里」コースとして一押しする、全長130メートルの前方後円墳です。足を延ばしてみましょう。
  貴重な古墳であることは考古学関係者の間で、知れわたっていました。それで、県立橿原考古学研究所を中心とする大和古墳群学術調査委員会が1997年から翌年にかけて発掘調査を実施しました。竪穴式石室の天井石をめくると、埋葬施設は真っ赤な朱に覆われていました。後世、地震で石室の天井石が崩れ落ち、埋葬施設を埋めてしまったため、古墳は奇跡的に盗掘を免れたのです。中からは卑弥呼の使者が中国の皇帝からもらった鏡との説がある「三角縁神獣鏡」が33面も出土し、ほかにも画文帯神獣鏡、刀剣、甲冑など貴重な遺物もあり、衝撃の発見となりました。三角縁神獣鏡と卑弥呼との関係については論争が尽きません。だからこそ、いっそう、古代史ファンを魅了します。
  天理市は黒塚古墳を中心に崇神天皇陵、景行天皇陵などを巡るコースを町おこしのスポットとしてPRしています。黒塚古墳脇の公園には「市立黒塚古墳展示館」を建設。発掘当時の石室を精巧に復元し、33面の三角縁神獣鏡のレプリカも展示しています。鮮やかな朱、出土した状態のままの鏡など、発見当時の興奮がよみがえります。

■花に彩られた古刹、長岳寺
  続いて、市トレイルセンターへ向かいました。ここは、山辺の道の四季や文化財を紹介しています。弁当持参の人の食事場所にもなっています。次は、花の寺、長岳寺へ。参道がヒラドツツジの生け垣で囲まれ、満開になれば、花堤のように赤く染まります。拝観受付場で出迎えてくれたのが黒ネコの「ノラちゃん」。ハイカーの一人が「(和歌山電鉄貴志駅の)たま駅長みたいやな」と頭をなでていました。放生池のコイもノラちゃん同様に人なつっこく、すぐに集まってきます。歩き疲れたハイカーを癒やしてくれます。
  長岳寺は天長元年(824年)に弘法大師が創建したと伝えられる古刹(こさつ)。本尊の阿弥陀如来像は、仏像の眼に水晶の玉を入れて、目元を慈悲深く表現したわが国最古の玉眼仏です。慶派など後の仏教美術に大きな影響を与えました。鐘楼門もわが国最古で、建物4棟と阿弥陀如来像など仏像5体が重要文化財に指定されています。

■王権の武器庫だった石上神宮には神剣が
  春の野花が咲き誇る道が続き、ミカン畑もところどころに、見えます。萱生と竹之内の環濠集落、夜都伎(やとぎ)神社、内山永久寺跡を足早に抜けて、いよいよ、ゴールの石上神宮へ。急勾配の道が続きますが、最後の力を振り絞りました。
  境内には、放し飼いされたたくさんのニワトリが待っています。タヌキが天敵で、夜になると、神宮の人が「鳥かごに入れて保護している」そうです。格式高い神宮ですが、ほほ笑ましい光景ですね。
  神宮は古代の軍事氏族、物部氏が祭祀を司り、王権の武器庫としての役割を果たしてきたと言われます。ご神体は布留御魂剣(ふつのみたまのつるぎ)と呼ばれる神剣です。神武天皇東征の伝承によると、天皇が熊野の地で危機に陥った際、地元の土豪、高倉下(たかくらじ)が天皇にこの神剣を献上し、邪霊を倒して大和入りに成功したと伝えられます。明治期に神宮の神宝が埋まった禁足地を発掘すると、実際に刀剣が出土しました。
  神宮には国宝・七支刀(しちしとう、ななつさやのたち)も伝わっています。剣身の左右にそれぞれ3本の枝を出すように作られ6本の枝と1本の剣身を合わせると、七つ鋒(きっさき)になる比類ない形です。剣身には61の文字が金で象眼(埋め込む)されています。「泰□(和)四年(369年)」と読める文字があり、百済から倭王に送られたものと解釈する説が有力です。日本史を読み解く超一級の資料です。
  仏教伝来地を出発し、仏教の導入を巡って蘇我氏と争った物部氏ゆかりの石上神宮でゴールイン。途中に、巨大な天皇陵や邪馬台国の有力地があり、十数キロは日本古代史を縦断する大パノラマです。

〈グルメ〉
  ご当地ラーメンは「天理ラーメン」。具に白菜、豚肉、ニラを入れた濃厚な味は、歩き疲れた体に、元気を与えてくれます。天理スタミナラーメンと彩華ラーメンがあり、どちらも人気です。近鉄、JRの天理ステーションストアにある「天雅」のギョーザも美味。山辺の道を歩いて、ラーメンとギョーザで締めくくるのは“天理通”です。

〈天理市トレイルセンター〉
  自然と親しみ学習できる休憩施設。シャワー(6分使用で100円)を備えており、ハイカーに重宝がられています。
無休。開館時間は午前8時30分~午後5時。TEL0743・67・3810

〈三角縁神獣鏡〉
  鏡の縁の断面が三角形になっていることから三角縁と呼ばれます。全国で400面余り出土し、中には魏の年号「景初三年」「正始元年」などと記した鏡があることから、卑弥呼の使者が賜った「銅鏡」との説が提唱されました。ただ、中国では出土例がなく、異論もあります。

〈物部氏〉
  神話に登場するに饒速日命(にぎはやひのみこと)を遠祖とし、九州・磐井の乱(528年)で物部麁鹿火(もののべのあらかび)が活躍しました。その後、仏教の導入を巡る争いで、物部守屋が蘇我氏に敗れ(587年、丁未の乱)、没落。後に石上氏となり、宅嗣らの文人を輩出しました。

〈アクセス〉
  天理への最寄り駅は近鉄、JR天理駅です。石上神宮までは約1.5キロ。

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