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関西プラッと便 薬と山城跡の高取町・町家のひなめぐり

関西プラッと便

2014年2月28日掲載

  陽光が日々、輝きを増してきました。薬と日本一の山城・高取城の城下町として栄えた奈良県高取町の土佐街道は、3月を迎えると100軒の町家の玄関口にひな人形が飾られ、町中が華やぎます。竹筒に納まったかぐや姫のようなおひな様から、ジャンボびなまで、様々なひな人形が、訪れる人を楽しませてくれます。

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■高取は薬草のルーツとして、日本書紀にも登場
  近鉄吉野線・壺阪山駅を下りると、「町家のひなめぐり」(3月1日~31日)の期間中、ボランティアガイドが観光客を出迎え、散策マップを手渡してくれます。すぐ目の前の国道169号を渡って、30メートルほど東に歩くと、石畳で舗装された土佐街道に交差します。
  「土佐」は古墳造りのため土佐地方(高知県)からやって来た人が住み着いて、この地名が残ったと伝えられています。石畳の路面に目をやると、所々に花を描いたタイルが点在しています。絵とともに「ゲンノショウコ 薬効:しもやけ・整腸・胃かいよう」という文字が刻まれています。キキョウ、ドクダミ、クズ、ナンテン、センブリ……。カエデやサツキ、タンポポも薬草になるそうです。タイルで学びました。メモ帳を片手に一枚、一枚数えながら、薬効を書き込むグループとすれ違いました。尋ねてみると大阪からのハイカーです。「えー、勉強になるわ」と感心していました。
  なぜ、薬草のタイルが? 明日香村に隣接する高取町羽田は古来から薬草の地として有名です。『日本書紀』の推古天皇20年(612年)の条には、この地で「薬猟(くすりがり)」が行われたと記されています。今も奈良県の製薬産業の中心地で、町内には薬膳料理の店もあり、「健幸の町」をうたっています。

■100軒の町家に並ぶひな人形は壮観
  古くから開けた高取の町は南北朝時代(14世紀)に山城・高取城の築城が始まり、明治6年(1873年)の廃城まで栄えました。
  そんな歴史を誇る高取町にも過疎、高齢化の波が押し寄せています。そこで、町に再び活気を取り戻そうと、シルバー世代が「NPO法人住民の力 天の川実行委員会」を結成しました。代表の野村幸治さんは都会からのUターン組。「このままでは、町は寂れる一方です。何とか人を呼べないか」と考え、平成19年(2007年)に、土佐街道をひな人形で飾る「町家のひなめぐり」を企画しました。
  野村さんによると、「高取とひな祭りは特に歴史的ないわれはないのですが、女性客が集まれば、口コミの発信力がある」という狙いでした。実際に、格子や白黒の外壁の町家が軒を連ねる町並みにひな人形飾りは、よく似合います。野村さんらの試みは見事に成功。賛同してくれた町の人たちが、古くなったひな人形を、自宅の玄関口に、次々と飾ってくれるようになりました。第8回を迎える今年は、街道の約2キロ、100軒が、ひな人形で彩られます。昨年は、期間中4万3千人の人出でにぎわいました。町家の人も観光客をもてなしてくれます。呉服屋を改装した町観光案内所「夢創舘」の女性は、「今や高取の新しい風物詩となっています。県外からの人も多いです」と、にぎわいを取り戻したイベントを歓迎しています。
  今年はひな飾りと並んで、「花の寄せ植え」にも力を注いでいます。60軒の町家の軒先には、色とりどりの寄せ植えが並び、美しさを競います。また、古い着物を飾る民家も増え、街道一帯はひな人形、花、着物で埋まり、〈和の博物館〉といった趣に染まります。町内3か所には住民が作ったジャンボびなも設けられ、ひな祭りを盛り上げます。

■比高350メートルの日本一の山城・高取城
  町並みを見て回るだけで、半日ほど、かかりますが、せっかくなので、高取城跡を目指しました。日本100名城の一つで、国の史跡です。標高583・9メートルの高取山山上に築かれ、ふもとからの比高は約350メートル。まるで、山登りのようなコースです。
  土佐街道にある児童公園から城跡へ向かいました。公園は高取城から移築した「松の門」が目印。ここから武家屋敷、植村家長屋門が続き、城下町の情緒が漂います。さらに進むと上小島元気広場に出ます。シルバー世代の3人が、高さ数メートルのひな作りに励んでいました。今年のエト・馬をひなに仕立てるそうです。声をかけると「たてがみが難しいね。ひなめぐりのイベントまでには、出来上がります」と張り切っていました。
  高取城跡はここから歩いて約1時間。途中、昭和を代表する俳人、阿波野青畝の生家と書いた道案内が見えます。少し山道にそれますが、登ってみました。近くにお寺があり、句碑がひっそりと、たたずんでいました。
  元の道に戻って、桜の名所・砂防公園~水車~高取藩主・植村家の菩提寺宗泉寺と続きます。ここから先は舗装されておらず、まさに曲がりくねった山道です。坂を登ると、もう息は絶え絶え。それでも、気合を入れて、山頂へ。
  城跡は明治の廃城で、建物はほとんど失われましたが、苔(こけ)むした石垣が、歴史の重みを伝えてくれます。幕末の天誅組との攻防では、この城から砲弾が発射され、司馬遼太郎の小説『おお、大砲』にも描かれています。城跡にある国見やぐら跡からは奈良盆地と、それを取り囲む山並みが一望できます。まさに、砦です。一国の主になったような感慨に浸りました。

〈阿波野青畝〉
  難聴の俳人で俳句雑誌「ホトトギス」で活躍。山口誓子、高野素十、水原秋桜子とともに、頭文字をとって4Sと称されました。代表作に「葛城の 山ふところに 寝釈迦かな」などがあり、高取町内には5か所に句碑が建立されています。青畝文学館もあり、3月9日、21日の茶会の日には公開されます。

〈お里・沢市墓所 信楽寺〉
  浄瑠璃、歌舞伎、浪曲にも語り継がれる夫婦愛の物語『壺坂霊験記』のモデルになったお里と沢市の墓と伝えられます。小さな墓ですが、訪れる人で供養の花が絶えません。

〈夢創舘〉
  観光案内所で、無料休憩ができます。地場産品が展示・販売されています。プリっとした食感の「吉野の葛餅」は土産物として人気です。館の裏には「くすり資料館」も併設されています。 月曜休館。3月中は無休。
TEL:0744・52・1150

〈宗泉寺〉
  天台宗・延暦寺の末寺。雛供養も受け付けています。
TEL:0744・52・2607

〈ギネスワールドレコーズ 高取城〉
  シルバー世代が3万5679個のビールの空き缶で作った高取城の再現オブジェ。高さ4・1メートル、奥行き3・5メートル、幅3・6メートル。世界最多数のアルミ缶で作ったオブジェで2012年にギネスの認定を受けました。


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