• ホーム
  • 関西プラッと便 晩秋の奈良・西ノ京の古寺を自転車で巡る

関西プラッと便 晩秋の奈良・西ノ京の古寺を自転車で巡る

関西プラッと便

2013年11月01日掲載

  正倉院展(11月11日まで、奈良国立博物館)などイベントが目白押しの奈良。近鉄奈良駅に近い、東大寺や興福寺、春日大社など世界遺産巡りを楽しむ人たちで、にぎわっています。でも、奈良市の中心部だけを観光して帰るのは、もったいない。少し西へ足を延ばして、世界遺産の唐招提寺、薬師寺が並ぶ「西ノ京」周辺を自転車で巡るのも一興。晩秋の自然と古寺の風情を楽しんでみませんか?

地図

画像をクリックすると拡大してご覧いただけます。

■びっくりの西大寺・ジャンボ茶わん
  大阪、京都方面から足を運ぶなら、大和西大寺駅で下車し、すぐそばの「西大寺サイクルセンター」で自転車を借りると便利です。この店では、目的地を言うと地図もくれました。
  まず、最初は、目の前にある西大寺を訪ねました。「東の東大寺」に対し、「西の西大寺」と呼ばれましたが、東大寺とは趣が異なり、素朴な佇まいです。創建は奈良時代。四王堂に安置された十一面観音(重要文化財)は、高さ約6メートルに達し、その大きさに驚かされますが、愛染堂に展示されている大きな茶わんも、びっくりのジャンボサイズ。寺の名物行事「大茶盛式」に使われ、直径約40センチと、頭がすっぽりと入るほどの大きさです。受付の人によると、大茶盛式は約800年続く伝統行事で、新年(1月15日)と春(4月第2日曜日と前日の土曜日)、秋(10月第2日曜日)に行われ、「重さは5~8キロもあり、両隣の人が支えてくれるので飲むことができます」。

■天神さん生誕の地、菅原天満宮
  次は学問の神様、天神さんで知られる菅原道真(845-903)の生誕地にある菅原天満宮に向かいます。街中の細い道を10分ほど自転車で南下すると道真が産湯の水に使ったと伝えられる池があり、右折したところに神社がありました。菅原氏は土師氏から道真公の三代前に枝分かれした氏族といわれ、地名の「菅原」を氏にしたそうです。
  神社のすぐそばには、東大寺の大仏建立に力を尽くした僧・行基(668-749)が、創建した喜光寺があります。本堂(重要文化財)は、東大寺の大仏殿によく似ています。「真似をしたのではありません。本堂がモデルになって大仏殿が建てられたのです。だから〈試みの大仏殿〉と呼ばれています」と寺の人。

■ギリシャ神殿を思わせる唐招提寺のエンタシス柱
  次は唐招提寺です。近鉄橿原線の線路を挟んで、西側に見える垂仁天皇陵のそばを通るコースを行きました。広がる田畑の中を自転車で走るのは、気持ちがいいものです。御陵が見えてきました。全長227メートルの前方後円墳。綺麗な墳形をしています。
  15分ほどで、お寺に着きました。奈良時代に唐から渡ってきた鑑真和上(688-763)の創建です。南門をくぐると金堂(国宝)が、目の前に迫ってきます。正面に並ぶ8本のエンタシス列柱の吹き放ちが、シルクロードを挟んで遠くはなれたギリシャの神殿を思わせるのはなぜでしょうか。
  おほてら の まろき はしら の つきかげ を つち に ふみ つつ もの を こそ おもへ  という会津八一の歌は、ロマンをかきたてます。
  中に入ると、ひんやりとした空気が神聖な気持ちにしてくれます。開山堂では今年春から鑑真和上のお身代わり模像が安置されていました。通りがかった若いお坊さんは「お身代わり模像は国宝の鑑真和上坐像と同じ製法(脱活乾漆・土の原型に漆で麻布を貼る)で3年がかりで作られたのです」と話してくれました。

■墨作りが体験できる、がんこ一徹長屋・墨の資料館
  最後に目指すのは薬師寺ですが、お寺の手前で「がんこ一徹長屋・墨の資料館」の看板を見つけて、気になったので寄り道することに。すぐに行き先を変えられるのがサイクリングのいいところです。この長屋は近鉄西ノ京駅のそばにあり、伝統工芸の奈良筆、赤膚焼などのがんこな職人たちが一堂に集まった作業所です。隣接して墨の資料館があったので入ってみると、職人たちが墨を型に入れる作業に汗を流していました。作業場全体に墨の香りが漂い、小学校の習字の授業を思い出します。ここでは、墨作りの体験もできます。

■61年ぶりに塔の水煙が公開されている薬師寺
  そして、薬師寺に到着。白鳳時代の680年、天武天皇の皇后で後の持統天皇の病気平癒を発願し、建てました。国宝の東塔(三重の塔)は解体修理中でしたが、塔の一番上にあった「水煙」が61年ぶりに、地上に降ろされ、公開(11月30日まで)されていました。水煙は塔が火災に遭わないように、塔が建てられてから1300年祀られてきました。水煙のそばで、説明役の僧が「緑色の錆は酸性雨による被害です。塔を護ってきた水煙をこのまま元に戻していいのか? 私たちも頭を痛めています」と世界遺産を守ることの厳しさを語ります。
  確かに、緑色の錆が目立つ水煙に痛々しさを感じます。しかし、その一方で、透かし彫りされた24体の飛天が笛を奏で、花を蒔き、衣を翻し、祈りを捧げる姿に、錆に負けない力強さ、美しさを感じることができました。
  寺を出て秋篠川沿いの「奈良自転車道」を走り、再び大和西大寺駅に向かいます。そろそろ夕刻。体が冷えてきました。温かい料理が恋しい季節になってきました。

メモ
<レンタル自転車>
西大寺自転車センターは近鉄大和西大寺駅南側駐輪場内にあり、自転車1台の1日(午前9時午後5時)利用料金は1000円。返却は斑鳩町の法隆寺センター、近鉄奈良駅近くの奈良自転車センターでも可。

<西ノ京コースの自転車走行時間=1時間6分>
大和西大寺駅~菅原天満宮(10分)~喜光寺(3分)~唐招提寺(18分)~がんこ一徹長屋(7分)~薬師寺(5分)~西大寺駅(23分)。※走行時間は目安です。拝観時間は除く。

<拝観料・一般>
西大寺は本堂・四王堂・愛染堂の共通チケット800円(本堂だけの場合一般400円)、喜光寺500円、唐招提寺600円、薬師寺は白鳳伽藍、玄奘三蔵院伽藍、水煙降臨展共通券1000円(一般通常拝観料800円)

<がんこ一徹長屋>
西ノ京駅ホームの西隣りにあり、入場無料。午前10時から午後5時まで(入場は4時30分まで)。
毎週月曜日が休業(休日の場合は翌日)。

関西プラッと便TOP>>